カートリッジ (HOME)
(このページの製作者は 頭蓋調整、その他治療 のプラクティショナーです)
MC-L1000(ビクター) + AT−LS1000(オーディオテクニカ)
T、MC−L1000(ビクター)、MC−L10(ビクター)、DL−1000A(デンオン)のキャラクター
MC-L1000(ビクター)
MC-L10(ビクター)
DL−1000A(デンオン)
アナログはあまり聞かなくなってしまいましたが、私のシステムではまだまだ現役です。
一般に 『 アナログ的な音 』 と言うと、解像度の低いもやっとした、しかし雰囲気が感じられる音を指す様ですが、私のシステムでは、高解像度でシャープな、しかし雰囲気や気配までも感じられる音が聞こえます。
現在は、アナログ最盛期に開発された、MC−L1000、MC−L10(ビクター)、DL−1000A(デンオン)の3つのカートリッジをメインに使っています。
因みに、何故か、私のシステムでは、MC−L1000とCD−10(CDプレーヤー、NEC製)の音は酷似しています。
これ以外に私の手許にある主なカートリッジはEPC−100C(テクニクス)、EPC−100CMK4(テクニクス)、MC−2000(ヤマハ)、V15タイプV(シュア)、AT−36E(オーディオテクニカ)、と言ったところですが、殆ど使うことは無くなってしまいました。
EPC−100C(テクニクス)
MC−2000(ヤマハ)
V15タイプV(シュア)
★先ず最初に、現在使っている3つのカートリッジの音質について書いてみます。
但し、カートリッジの音質は、多くの要素によって激変し、特にヘッドシェル、トーンアーム、イコライザーアンプ、に依存されやすく、更にはレファレンスのレコードによっても、評価はかなり変わって来ます。従って、あくまで私のシステムの中での評価になります。
因みに、この3個を取り付けているヘッドシェルは、オーディオテクニカの超高級バージョンのAT−LS1000です。(改造してます)
これらについては、 ヘッドシェル の項で詳述していますが、このシェルは素晴らしく素直な音を引き出してくれます。(私の装置では)
AT−LS1000
この中で、オーディオ的に最もハイファイなのは、当然の事ながらMC−L1000になります。
システムが長岡路線ですから当然と言えば当然ですが、これは正に長岡氏の言葉を借りると『物理特性を極限まで追求すると、そこに音楽性が出てくる』と言う感じで、情報量、ダイナミックレンジ、スピード感、高域の伸び、低域の量感と締まり、どれを取ってもベストです。
また、L1000は針圧に対しても極めてシビアで、標準値の1.5gに対して、0.05g の違いで再生音のニュアンスが変わります。
標準の1.5gの場合、中低域が充実し、しっかり感が出て来るのですが僅かにニュアンスが重い感じとなります。それに対して、1.4gでは軽すぎる感じで、中を取って1.45gが私にはベストバランスのように感じられます。
ただ、この違いはトーンアームのテクにクスのEPA100MkUだからこそ表現できる世界なのかも知れません。
それに対して、DL−1000Aの特徴は、しなやかさに在り、スピード感、情報量等僅かに落ちます。周波数レンジは同等の感じですが曲に依っては高域の輝きが増す事もあります。
それに対して、MC−L10は、情報量、繊細感、スピード感とMC−L1000に比べると若干落ちますが良い意味でのメリハリがあり、ジャズやロックをエネルギッシュに再生するのには返って相性が良い場合もあります。
従って、MC−L1000をリファレンスとした場合、もう少しソフトタッチしなやか系に振るので在ればDL−1000A、もう少しエネルギッシュメリハリ系に振るので在ればMC−L10と言う選択も可能な感じです。
その他には、MC−2000(ヤマハ)もあります。
このカートリッジは、DL−1000Aと似たような方向性で、良く言えば更にソフトタッチ、悪く言えば僅かにベールを被せた感じとなり、MC−2000を使うので在れば情報量、クリアー感等が勝っているDL−1000Aを使う事になってしまい、殆どお蔵入りと成っています。
MC−2000(ヤマハ)
EPC−100C(テクニクス)は、実にきめの細かい微粒子サウンドでしたが、使いこなしは難しく、その都度の使い始めの音は情報量の少ないつまらない音ですが、2〜3時間使っているとベールが剥がれ、上記素晴らしい音に変身する感じでした。
要するに都度ランニングが必要な訳で、毎度毎度2〜3時間のランニングはちょっと辛いので、あまり使えませんでした。
また、二台目のプリアンプ(デンオンPRA2000Z)が、MMとMCを切り替えるには、リアの配線を変えねば成らず、交換が面倒と言う事も手伝って更に使わなくなってしまいました。
EPC−100C(テクニクス)
それでもアナログマニアとして、テクにクスの100Cシリーズは気に成る存在で、100Cシリーズの最後のバージョンである100CMK4が製造中止になった後、最終ギリギリで入手しましたが、これは更にいまいちでした。
EPC−100C(テクニクス)
EPC−100CMK4(テクニクス)
アルミダイキャスト一体成形のハウジング 外観からは解らないがマグネシウム製
EPC−100CMK4ですが、入手してみて始めて気が付いたのですが、このカートリッジはヘッドシェル一体型でオリジナルからVまではボディの材質がアルミダイキャストだったのに対し、MK4はマグネシウムダイキャストに変更に成っていました。
私の素材のキャラクターに対する聴感上のイメージとして、マグネシウムはアルミに対してこもった感じがしてどうしても好きに成れず、EPC−100CMK4にも同様なキャラクターを感じてしまい、殆ど使わないまま今に至っています。
U、私のカートリッジ遍歴
カートリッジについては、当時、第一家電で『マニアを追い越せ大作戦』と言うキャンペーンを定期的に行っていて、カートリッジを複数組み合わせてかなり割安にセールしていました。
最初のカートリッジは、そのキャンペーンでオーディオテクニカのAT−15Ea、シュアのV15V、ビクターのX1−D、を買いました。大学4年の初夏の頃でした。
V15タイプV(シュア)
X-1D(ビクター)
それで、15Eaをメインに聞いていましたが、ある日、卒業研究でお世話になっていた大学院の先輩がビクターのMC−1を貸してくれ、自分の装置で始めてMC−1を聞き、かなりの衝撃を受けました。女性ボーカルが別人の様なリアルさで再生され、特にピアニッシモの声の情感がまさに次元の違う音でした。しかし、MC−1は当時の価格で¥48000−、たかがレコード針、貧乏学生にとっては気の遠くなる金額でした。
程なく大学を卒業し、電子機器メーカーに就職しましたが初任給は安く、とても交換針を買う余裕はありません。そうこうしているうちにダイナミックオーディオから数量限定先着5個、¥32000−と言うダイレクトメールが来ました。それでも迷いに迷って数日後に電話をして取り置きしてもらい購入しました。
大学時代の先輩は、テクニクスのEPC−100Cも所有していて、さすがに素晴らしい音がしていました。これもまともな価格では手が出ません。そうこうしているうちに、第一家電の渋谷店で店頭品が半値で売りに出たと友人が知らせてくれ、これも迷った末購入、しかし、これはスタイラスカバーにひびが入っており、(確認しなかった私の不注意でしたが)クレームを話すと新品に交換してくれ、ものすごく嬉しかった事を憶えています。
ビクターのMCカートリッジについては、MC−1からMC−L10にマイナーチェンジ、当然の事として私のメインカートリッジもL10にチェンジしました。
音質の変化は、さすがにだいぶ前の事なのでうろ覚えですが、低域、超高域ともに若干レンジが広がり、エネルギー感も若干向上した様に記憶しています。
要するに、同じベクトル上で全てのファクターについて若干向上した感じでした。
さらに、L10からL1000にフルモデルチェンジ、これはマイナーチェンジでは無く完全なフルモデルチェンジでしたが、前回のマイナーチェンジは量的な変化だったのに対して、今回は全てに渡って質的に変化した感じで次元の違う音になった感じでした。しかし、確かにL1000の音は素晴らしいですが、喜んでばかりも居られない事が解って来ました。
V、針先形状及び構造の、音質及び寿命に関する考察
私は、MC−1から始まってMC−1は2個、MC−L10も2個使いきり現在使っているMC−L10は3個め、因みに、MC−L1000は3個使いきり現在が4個めです。
MC−1、MC−L10は構造的にはほぼ同等で、細部の寸法に若干の違いは在るものの、針先形状も同等です。
それでMC−1、MC−L10の寿命ですが、実際にカウントした結果、約900時間の演奏が可能の様でした。針先の磨耗による聴感上の変化ですが、MC−L10の場合、最初一時的に高域が良く伸びて華やかな感じに成り、しかし程なくこの華やかな感じが低下し、高域が詰まった感じになり、次ぎに低域の伸び、量感が無くなり軽くてカサカサした音に成る様な印象を受けました。
ここまで来ると完全にふんづまりで、かなり冴えない音になります。そのちょっと前の低域の量感の低下を僅かに感じる時くらいが、換え時の様な気がします。それに対して、MC−L1000の場合、その様な予兆が無くいきなり低域の伸び、量感が減って来る感じがします。
尚、DL−1000Aについては、まだ1個目の為、良く解りません。
さて、L1000の問題は、その耐用時間にあると思います。私の実測では約600時間で、これはL10の2/3と言う事になります。
初めてL1000を使っていて、寿命についてはL10と同じくらいは持つだろうと漠然と思っていた私は、約600時間で針先の磨耗をきたし、『 それは無いだろ〜 』と言う感じでした。
価格が30%アップして、耐用時間は30%ダウンと言う事に成ります。
L10、L1000ともに針先の形状は『 ラインコンタクト 』と公表されていますが、どうやら微妙に異なる様です。そこで、針先形状を実体顕微鏡で確認してみると、横からみたスタイラスの厚さ方向の針先の角度が、L10の約45度に対してL1000は約30度でした。
要するに先端が尖っていて、これでは針先の磨耗が早い訳で、耐用時間の2/3は感覚的にも納得出来る気がしました。
因みに、取扱説明書には、L10、L1000ともに『700〜1000時間を目安として交換して下さい』と書いてあり、誤差範囲を考慮すればともにまあ間違ってはいないと思います。
L10とL1000は、ハウジングまで含めてのフルモデルチェンジですが、音質に関わる大きな違いは、針先形状と、針とコイルの距離です。
MC-L10(ビクター)
MC-L1000(ビクター)
針とコイルは少し距離があります 針のすぐ上にコイルが見えます
L10はスタイラスチップからコイルまでの距離が約1.2mmなのに対して、L1000はスタイラスの真上にコイルが来ており、まさに直結です。
L1000の発売当時はこの直結という事が宣伝のうたい文句だったと記憶していますが、私の感じでは繊細感、情報量の差は、針先の形状、特に針先の横から見た角度に在る様な気がします。針の厚さが薄ければ薄いほど、レコードの音溝の細かい凹凸を拾える訳です。また、スピード感、音の立ち上がり立ち下がりの早さは主に距離に依存している様な気がします。

やはり、MC-L1000は純粋に性能を追求した贅沢なカートリッジだと思います。
尤も、以上全て私の推測ですが。

それに対してDL−1000Aは、スタイラス回りの実効質量を極限まで軽量化して高性能を追求したカートリッジで、同じ運動をするのなら、軽い方が動きも楽だし無理が無い訳です、しかし、剛性や強度と言ったファクターは低下し、そのへんの弱さがしなやかさに繋がっていると思います。
DL−1000A(デンオン)
針先はかなり小さく、50倍程度の顕微鏡では磨耗の観察が出来ない
どちらにしても、これらのカートリッジは熟練した作業者が顕微鏡の下で手作業により組み立てられ製造されており、この様な拘りの製品はもう二度と量産される事は無いでしょう。
噂ですが、ビクターは一度だけL1000のラインを復活させた事が在るそうですが、歩留まりが悪く、結局うまく行かなかった様です。
私は、この3つのカートリッジは、まだスペアが在り、アナログを聞く機会も段々減って来ているので、当分はアナログの至宝の音を楽しめそうです。
オーディオをシステムの観点から見ると、個々のパーツの性能の劣化はランダムに発生し、どれか一つの性能が劣化するとその部分がボトルネックと成りトータルの性能も低下してしまいます。
従ってシステムとしての性能を最高潮に維持することは至難の業と言う感じがしますが、実際に私の装置が最高潮と感じられた頃、これは数カ月の期間でしたが、システム全体がまさに一本のワイヤーウイズゲインと言う感じになり、カートリッジの針先形状の違いがそっくり再生音として感じられた時がありました。
今となっては夢の様な話しですが。