スーパーツィーター (HOME)
(このページの製作者は 頭蓋調整、その他治療 のプラクティショナーです)
T、SG−160(ゴトーユニット)との出会い
SG−160(ゴトーユニット) + 自作ブチルゴム銅板 積層置き台
長岡鉄男氏設計のバックロードホーンは色々なバリエーションがありますが、フォステクスのFE−20*スーパーを使ったシリーズはエキセントリックな部類に入ると思います。
私は、初期型であるD−55(FE−206スーパー1個使用)を1989年の夏に製作しました。
このD−55の使いこなしで一番難しいのは、スーパーツィーターとの組み合わせだと思います。
私の場合、一般的に市販されている殆どのスーパーツィーターを使ってみて、全て一長一短で決定版に出会えない状況の時、御茶ノ水のオーディオユニオンで、パイオニアのリボンツィーター、PT−R7を見つけました。
PT−R7Vは振動板がベリリウムリボンですが、オリジナルのPT−R7はアルミリボンで、この方が音に色気があると聞いていて、以前に捜した事もあったので、店の人と話をしているうちに、
『 お客さん、こんなのが最近入ったんですよ。 』 と、まだ入庫したばかりで店頭に展示していないゴトーユニットのSG−160を見せてくれました。
因みに、国産の主だったスーパーツィーターの特性は以下の様になっています。
名称(メーカー)
形式
周波数特性
(KHz)
音圧レベル
(dB)
総磁束
(Maxwell)
重量
(Kg)
SG−160(ゴトーユニット)
ホーン
4〜30
115
60万
6.0
ET−703(パイオニア)
ホーン
5〜45
107
4万
1.1
PT−R7V(パイオニア)
リボン
5〜120
97.5
18万
2.6
T925(フォステクス)
ホーン
5〜40
108
不明
1.8
FT90H(フォステクス)
ホーン
5〜35
106
1.6万
0.7
EAS−10TH1000(テクニクス)
リーフ
4〜150
95
26万
3.6
SG−160を製作しているゴトーユニットは、ホーンシステム専門のガレージメーカーで、私も名前は一応知っていましたが、SG−160は初めてでした。
製品に添付の特性表をみると、周波数特性4〜30KHz、音圧115dB、重量6Kg、このスペックからもこのスーパーツィーターがただ者では無い事がうかがい知れました。
上に掲げた特性を比較した表からも、SG−160は同種のホーンタイプのスーパーツィーターと比べて、マグネットがケタ違いに大きい事が読み取れます。
まさに、 『 スーパー 』 なツイーターと言えると思います。
さて価格ですが、新品の場合、定価販売で1台¥215000−、中古でも半額との事でした。
SG−160は確かに魅力的なスーパーツィーターでしたが、値段が値段だけに即決は出来ず、取り置きしてもらって一晩考える事にしました。
翌日、オーディオユニオンで別の店の店員である、朝倉さんに電話をかけてご意見を伺ってみました。彼は個人的に長岡式マニアで、一時はFE−206スーパー2発のバックロードホーンを使っていたので、私にとって彼の言葉は信用が出来ます。
『 う〜ん、このクラスになると私は試聴していないから、無責任な事は言えないな〜。でも一般的に言える事は、マグネットがでかいと澄んだ気持ちの良い音がしますよ。でかいマグネットって可愛いもんですから、マグネットを買うと思って如何ですか?それに、このクラスの中古はたまに出ますが、ブチルなんかでダンプした痕が残っていたりして汚れた感じのが多いですよ。きれいな中古は少ないから出物ですよ。ところでそれドライバーですよね、ホーンはどうしますか? 』
『 なんか、ドライバー本体にショートホーンがついてましたよ。』
『 ああそうでしたか、じゃあ大丈夫ですね。』
確かに、今回のSG−160は、ピカピカで、『 出物 』に関しては私も納得でした。
ここは一つ決断のしどころ、思い切って買う事にしました。
因みに、ゴトーユニットを船便で海外に持ち出そうとしたら、地雷と間違われ、スピーカーだと言っても信じてもらえずに、大変な目にあったと言う逸話を聞いた事があります。
確かに、これだけマグネットが大きいと、地雷に間違われても仕方ない感じです。
★自宅に持ち帰り、音を出したその瞬間、何かがストンと落ちた★
『 終わったな・・・・・。 』
それまで常に感じていた、スーパーツィーターを付加する事のデメリットが全く感じられず、まさにメリットのみ、これは感動的な出来事でした。
事実、これを境に、ハードのグレートアップは打ち止めとなりました。
U、私のスーパーツィーター遍歴
★SG−160の導入前は、ともにパイオニアの、ET-703、PT−R7Vを使っていました。
 一長一短と言う感じで、固定できませんでした。
ET-703
PT-R7V
明るくカラッとしていて陽性 シャープでスッキリ、バランス良好
★定番とも言える、フォステクスも使って見ましたが、これらはいまいちでした。
T925
FT−90H
エネルギッシュでパワフル エネルギー普通、シャープ
★究極の音を求めて、テクニクスEAS−10TH1000も使って見ました。
EAS−10TH1000
H-105 (コーラル)
温かみあり、Fレンジ広大 (友人の結婚に伴い、拙宅にやって来ました)
D−55をはじめとするバックロードホーンシステムは、それ単体では高域が不足するため、ツィーターを乗せて、2ウェイシステムとして使用するケースが一般的です。
私の場合も、最初はフォステクスのT925と組み合せ、これで一応音に成っていました。
しかし、最適なクロスオーバー周波数が2週間くらいでどんどん変って行くのには、閉口しましたが、これは半年ぐらいでなんとか落ち着きました。
しかし、自分のイメージする音、あくまで澄み切った広大な周波数レンジ、バッハのハープシコードの超高域の余韻が部屋の天井まで伸びてホログラフィーの様に響く華麗な音、この様な感じはいまいちでした。
確かに、以前使っていたNS−1000M(ヤマハ)にリボンツイーターPT−R5(パイオニア)を追加した変則4ウェイに比べると格段の進歩向上でしたが、逆にスーパーツィーターの素性をストレートに出してしまう感じもあって、どこか発展途上と言う感じでした。
次に入手したのは、エクスクルーシブ(パイオニアの高級ブランド名)のET−703でした。
これは確かにT925よりは明るくて切れもあり、なかなかの音色でしたがやはり固定出来ません。
次は、パイオニアのPT−R7Vを使ってみました。購入にあたって、能率の低さが心配でしたが、辛うじて大丈夫な感じで、やはり、力強さが少し足りない感じもしました。
念のためと言う感じで、FT−90H、FT−50H(以上フォステクス)と乗せてみましたがやはり一長一短でした。
こうなると、 『 毒を喰らわば皿まで 』 と言う感じもあって、なかば意地になって、テクにクスのEAS−10TH1000も購入、やはり固定出来ません。
最終的には共に改造したET−703とPT−R7Vを交互に使って聞いていました。
あるとき、なんの気無しにスーパーツィーターを外してみると、これでも十分に音になっており、若干超高域が寂しい感じもしましたが、そのかわりに、スカッとした秋晴れの空の様な爽快感があり、これはこれでなかなかの音でした。
『スピーカーはフルレンジに始まり、フルレンジに還る。 』と言う言葉がありますが、なるほど、こう言う事を言うのかも、と、妙に納得した事を憶えています。
この後、FE−206スーパーをエンクロージャーに固定しているボルトをチタンに変えてみると、音色一変、スーパーツィーター無しでも十分実用になる感じになりました。
逆に言うと、スーパーツィーターを乗せると、確かに良くなる部分は認められますが、同時に、返って悪くなる部分も感じられ、具体的には微小信号が僅かにマスクされて濁った感じが出てしまい、同時に音の伸びが押えられる感じがして、具体的には超高域の余韻の漂うような雰囲気は返って後退する感じで、殆どスーパーツィーター無しで聞くようになってしまいました。
長岡鉄男氏は、 『 D−55にはスーパーツィーターは絶対に必要 』 と書いていましたが、私のシステムは長岡鉄男氏のリファレンスと酷似しいるにも拘わらず、スーパーツィーターに関してはどうも当てはまらない感じになって来ました。
この様な手詰まり状態の時に、SG−160と出会ったのでした。
ここで、その他のスーパーツィーターの私なりの印象を簡単に書いてみます。
・T925
 エネルギッシュでパワフルですが、少し大味な所あり。
 ジャズやロックに、相性が良さそうです。
・FT−90H
 T925に比べて、少し細身でシャープな印象。
 これは万能タイプだと思いますが、T925と比べて一長一短な感じ。
・ET−703
 明るくてカラッとした音色、陽性のサウンド。
 高域の周波数特性もよく伸びていますが、超高域の繊細感いまいち。
 フュージョンやフォークに相性が良さそうです。
 但し、ET−703はターミナルの改造でかなり印象が変わりました。
 これはターミナルを改造後の印象です。
・PT−R7V
 シャープですっきりとした音色、バランス良好ですが、少し細身で冷たい感じ。
 とくにこれと言った相性は無さそうです。
・EAS−10TH1000
 暖かみの有る音色。
 Fレンジは、超高域まで十分に伸びていますが、エネルギー感、シャープさはいまいち。
 メジャーのクラッシクとか、女性ボーカルの暖かさを求める場合に相性が良さそうです。
・H−105
 何故か私の手許にあります。
V、スーパーツィーターに対する私なりの考察(SG−160を使って)
★周波数特性における超高域について
D−55 + SG−160
SG−160 は存在感抜群
FE−206スーパーの周波数特性は、公称45HZ〜20KHzですが、超ローテクの無漂白パルプコーンで(長岡氏は、これが一番良いと言っていました)、高域は15KHzくらいまでしか伸びていないと思われます。
(逆に言うと、伸び過ぎか?)
この様な特性であっても、使いこなしによってスーパーツィーター無しで十分に実用に成ると言う事は、巷で考えられているスーパーツィーターの受け持つ周波数域までの再生は本当に必要なのでしょうか?
ここで私の考えた仮説は、一般的に超高域と言われている音域は、実は、高域のダイナミックレンジに依存しているのでは無いか、と言う事でした。
従って、超高域の再生を指向するのであれば、物理特性としての超高域までの再生周波数を伸ばすのと平行して、高域のノイズや歪、余計な付帯音を一つ一つクリアーにして、ダイナミックレンジを伸ばして行く事も、一つの方法では無いかと思いました。
人間の耳は20KHzを聞き分けるのは不可能と言われていますが、その通りかも知れ無いとも思います。
★バックロードホーンとスーパーツィーターの組み合わせ
メインのユニットである、FE−206スーパーの音圧レベルは、公称98dBですが、特性表をみると、100dBくらいの感じがします。
それに対して、SG−160の音圧レベルは115dBで、まともに考えるとアッテネ−ターで音圧を下げないとレベルが合わない事になります。
しかし、聴感上は0.22μFのコンデンサーを直列につないだ6dB/OCTのハイパスフィルター1個できれいにつながる感じです。電気的にはクロスオーバー周波数をかなり高めに設定して(45KHz)、再生周波数帯域全体を左ダラ下がりにしてかろうじてつないでいる事になります。
この組み合わせと比較すると、それまでのスーパーツィーターは、クロスオーバー付近で歪みが発生し、リニアリティが低下して音が濁っていた様な気がします。
それに対してSG−160はマグネットの大きさでしょうか、微小信号領域の歪みが少なく、リニアリティが確保されているのでは無いでしょうか、もしそうだとすると、この無駄とも思える巨大なマグネットは、しっかり機能している事になります。
結論として、システムの音の純度を極限まで追求して行くと、クロスオーバー付近の歪は大きなデメリットとしてクローズアップされる感じです。この歪みを減らすには、ネットワークを構成するパーツの質を上げるのと、強力な磁界で微小信号領域のリニアリティを向上させる事が有効と言う事になるのでしょうか。

因みに、幸いな事に私の入手したSG−160はインピーダンスが16Ωでしたが、もしこれが8Ωであれば、つながらなかった可能性が考えられます。
実際、16Ωで0.22μFのハイパスフィルター1個の場合のクロスオーバー周波数を計算してみると、なんと45KHzになってしまいます。
ET−703の場合も、フィルターコンデンサーは0.47μFとか0.22μFを使っていましたから、計算上のクロスオーバー周波数は42Kzと90Kzになってしまい、いずれも可聴周波数帯域より遥かに上の領域から減衰をスタートさせ、音圧レベルを下げながらクロスしていた事になります。
従って、実際のクロスオーバー付近は、かなり絞られた領域だと考えられ、ハイパスフィルターをもう少し大きい値にして、クロスオーバーの数値を下げて、スーパーツィーターのリニアリティが確保できる状態で使う事が出来れば、もう少し楽に(歪みが少なく)繋がるのでは無いでしょうか。
そのためには、バックロード本体は少し早めに高域が減衰すると好都合です。
フォステクスの新しいバックロードホーン用のユニットのコーンは、私の使っているタイプとは見たところの印象がかなり異なります。
どの様な特性になっているのでしょうか?
W、スーパーツィーターのハイパスフィルター
0.22μF
(オーディオデバイス)
0.47μF
(オーディオデバイス)
λコン  1.3μF
(太陽通信)
外見は極々普通ですが、ただものでは無い!! アルミケース入りでカッコイイ!!
ハイパスフィルターに何を使うかは頭の痛い問題です。
過去に市販されたフィルターコンデンサーで最高のクオリティは太陽通信のラムダコンデンサーと思われますが、現在入手不可能です。
現在使っているのは、0.22μFであり、私は、1.3μFと1.0μFのラムダコンを持っていますが、容量が大きすぎてここでは使えません。
幸いな事に、今は解散してしまったオーディオデバイスと言うガレージメーカーの放出品のコンデンサーで0.47μFと0.22μFを偶然アキバのガード下で手に入れ、これがなかなかのクオリティでこれを使い続けています。
当時、アキバで売られている殆どのコンデンサーを使ってみましたが、どうもいまいちでした。
尤も、最近の製品については、解りません。
X、スーパーツィーターの置き台
円筒タイプ用 置き台
PT−R7V用 置き台
これは、再製作した大型の置き台です
変形防止のために、内部に補強が入っています
これも、けっこうデカイです
スーパーツィーターの置き台は、私のシステムでは、トータルのクオリティにおいてかなりのウェイトを占めています。
最初の頃は、置き台の重要性には全く気が付かず、T925を購入した時にオマケでくれた、パーチクルボードの置き台を使っていました。
ある日、なんの気無しに、ET−703をブチルゴムと銅板の自作積層インシュレータに乗せてみると、音色一変、超高域までキラキラッと音が一直線に伸び、置き台の重要性を再認識しました。
しかし、このインシュレータは単なる直方体だったので、円筒形のスーパーツィーターを乗せるには不安定でした。
早速、専用の形状のものを作ってみましたが、一聴してダンプが足らない感じで、思い切って大きなインシュレータ−を再製作しました。この置き台は、スーパーツィーターの自重による変形防止を考慮し、内部に銅板の補強が入っています。
これは結果的に大正解で、その後のSG−160(かなり大型です)を載せる事になりましたが、音質的にも剛性についても、大丈夫の様です。
この頃、PT−R7V用にも専用のデカイのを作りました。
ここで思う事は、私のような最もシンプルな2ウェイシステムでも、細部を詰めて行くとこれだけ色々な要素があるのですから、マルチの4ウェイを私が調整したら、大変な事になりそうです。
Y、スーパーツィーターの改造
PT−R7VとET−703については、改造を行なっています。
★PT−R7Vの改造
改造前
改造後
PT−R7Vは、ターミナルを固定しているプレートをプラスチックからアルミに交換しました。
ネジも交換する事になりますが、鉄を使っています。★意味があります
これだけで、音圧が1〜2dBアップした感じで、音の輪郭がかなりしっかりしました。
正面のショートホーンの裏側をブチルゴムでダンプしようかと思いましたが、ブチルゴムはけっこう嫌な刺激臭がして、振動版が腐食してしまいそうな感じがして思いとどまりました。
★ET-703の改造
改造前
改造後
拡大写真
ターミナルの根本にカラーが見えます
ET−703はターミナルそのものを交換しています。
ET−703のオリジナルのターミナルは、バックハウジングの構造上仕方が無いのかも知れませんが、片側止まりのワンタッチ式のかなり貧相なターミナルで、スプリングも弱く、とても使い易いです。
個人的には、かなり高価な部類に属するこの製品が、この様な貧相なターミナルでは折角のパフォーマンスが発揮出来ない感じで、情けないより、悲しい感じです。
このターミナルは、内側からボルトで固定されているので、ボルトを長いタイプに交換し、ケーブルを貫通して固定できるタイプのターミナルにカラーをいれてかさ上げする形で交換しました。
効果ですが、音のしっかり感、特に低域(スーパーツィーターなのに低域と言う表現ももおかしいですが・・・・・)の腰が据わって、情報量もかなり増え、ワンランク上の音になります。
また、本体の前後のハウジングですが、前方はアルミダイキャスト製のホーンユニット、後方もアルミダイキャスト製のバックハウジングが取り付けられています。
そこで後方のバックハウジングはカラーを入れて更に後方にずらしバックキャビティの容積を増やし、同時に背圧を逃がすようにしてみました。
正面のホーンユニットは取り外してみました。もともと、音圧は十分なのでホーンを取り外す事で、音圧が下がり、同時に指向性が改善される効果を狙ってみました。
しかし、ハウジングの改造は、殆ど効果が感じられず、元に戻してしまいました。
もし、ET−703をお使いでしたら、ターミナルの交換は音質の向上につながると思います。
また、この改造は、必要に応じて簡単に元に戻す事が出来ます。
尚、本ページは改造等のヒントを提供するものです。
電気製品の改造は短絡等の危険がつきまといますので、あくまで自己責任でお願いします。