(HOME)
パワーアンプ
(このページの製作者は 頭蓋調整、その他治療 のプラクティショナーです)
HMA-9500U (日立Lo-D)
T、パワーアンプ遍歴
最初に購入したアンプはトリオ(現在のケンウッド)のプリメインアンプで型番はKA−7300Dでした。しかし、このプリメインはMCカートリッジには対応しておらず、ビクターのMCカートリッジのMC−1を使うためにヤマハのプリアンプのC−2aを購入しました。
KA-7300Dはプリとパワーを切り離して別々に使用可能だったので、暫くはこのパワーアンプ部分を使っていましたが、やはりこれでは物足りなくなり、トリオのモノラル型パワーアンプのL−07MUの展示品をペアで半額で購入しました。
この頃はまだ自分の中で音に対する基準が出来ておらず、『何か安くて良い物は無いか』と言う感じでグレートアップを行っていました。また、就職したばかりでお金もありませんでした。
このパワーアンプは6年くらい使いましたが、徐々に高域の伸びが無くなって来ました。
そこで、今は亡きオーディオ評論家の長岡鉄男氏が自分のメインシステムに使い、絶賛していた日立ローディのHMA−9500Uの購入を決意しました。正に満を持して購入を決意と言う感じで、秋葉原に繰り出し、価格交渉の末話しがまとまりお金まで払いましたが、少し前に製造中止に成っており、結局手には入りませんでした。
聞いた話では、ちょうど数ヶ月前に最終ロット品が格安で売りに出ていたらしく、この時はかなり落胆しました。かと言ってその時は中古を買う気には成りませんでした。
そこで、2代目のパワーアンプは、終段のトランジスタがHMA−9500Uと同じMOS−FETで、プリメインでは在るがパワーアンプとしての性能を長岡鉄男氏が絶賛していたサンスイのAU−X111MOSを購入しました。これも6年ほど使いましたが、やはり徐々に高域の伸びが無くなりリタイヤ。ちょうどその頃、オーディオユニオンの国立店にHMA−9500Uが中古で出ていました。その時点での数年前に長岡鉄男氏のリスニングルーム(方舟が出来る前の事です)にお邪魔し、9500Uの継年変化について尋ねてみると、『9500Uについては大丈夫の様ですよ』とのコメントを貰っていたので、迷わず購入しました。HMA−9500Uの中古価格は一時はプレミアムがついていましたが、この頃はまだリーズナブルでした。
結局、このパワーアンプを使い続ける事に成ったのですが、やはり6年ほど使って、高域の伸びが無くなって来ました。長岡鉄男氏はHMA−9500Uについて『 不死身のアンプ 』と評していましたが、平家物語ではありませんが 『形在る物は滅びる』訳で、不死身と言う事は無い訳です。
事実、長岡鉄男氏愛用のHMA−9500Uもその後リタイアしています。
ちょうどその頃、オーディオユニオンの国立店に再度中古の9500Uが出ていて、やもたてもたまらずに購入してみましたが、なんとこれは更に音質が劣化していて、更に高域の伸びが失われていました。
しかし、音は出る訳でクレームの対象には成りません。
この時の情けない気持ちは今でもはっきり覚えていますが、使い物にならない、27Kgの鉄の塊の様な9500Uを2台かかえ、まさに途方に暮れてしまいました。
しかし、途方にくれていても何も始まらない、ここは意を決して日立にオーバーホールに出してみる事にして、土曜の午後にいきなり日立のサービスセンターに2台の9500Uを持ち込み、そこでサービスマンのM氏と出合いました。
日立製作所は、なんとなくお固い会社をイメージしますが、M氏は少しぶっきらぼうで職人肌のサービスマンでした。彼は私の見ている前で裏蓋をあけて、テスターで調整ポイントの電位を計って見せてくれましたが、目の前でテスターの針が振り切れ、『ね、こういうふうに長年使っていると電位が狂って来るんですよ。この調整は楽しい作業なんですよ。』と教えてくれました。
彼は親切な人で、アイドリング電流の調整方法を教えてくれ、調整時にテスターと直列にいれる固定抵抗まで私にプレゼントしてくれました。『 今なら、まだギリギリ補修部品が取れますよ。 』と言う事でM氏が2台の9500Uのオーバーホールを引き受けてくれました。
オーバーホールと言っても、最近の電子機器の様なユニット交換での修理では無く、基盤を外して熱で劣化している抵抗とかコンデンサー、リレー等のパーツを一つ一つ交換する極めて面倒な作業で、仕事とは言え、この様な作業を快く引き受けてくれたM氏には本当に感謝しています。
オーバーホール後、2台の9500Uは完全復活しました。
U、HMA−9500Uのキャラクター、使いこなし
まず9500Uのデザインですが、悪く言えば武骨、よく言えば無駄の無いシンプルなデザイン、かなり特徴的なデザインだと思います。
個人的には、私は気に入っています。
また、シャーシーに回路図が描かれているのは、この製品の設計者のオーディオに対する思い入れが感じられます。
ヒートシンク一体型のデザイン
取っ手がとっても便利(?)
至るところに回路図がシルク印刷されてます
MOS−FET の回路図
次にこのアンプの音質ですが、評論記事で酷評されているのを目にした事もありますが、音は出ると言っても初期性能を維持していない9500も相当数あると思います。
その様な事を踏まえて、私の使っている9500Uの音を言葉で表現すると、『 無色透明、超ワイドレンジ、エネルギー感大、男性的で骨太 』 そして、これらの要素を支えている土台のキャラクターとして、『 ハイスピード 』 が感じられます。
CDプレーヤーの使いこなしで痛感したのですが、同じハイスピードと言っても情報量が少ないとハイスピードな感じが出しやすいのですが、9500Uの場合、情報量、エネルギー感、ともに十分で全く抑えられた感じは無く、しかも十分にハイスピードで、これは長岡鉄男氏が常々言っていた、『 強力な電源 』 に支えられているのでは無いかと感じます。
このキャラクターは、プリアンプの、C−280Vにも通じるものがあると思います。
以上を総合して、まさに 『 オーディオマニア好みの音 』と言えるのでは無いか、長岡鉄男氏が入れ込んだのもうなずける素晴らしい音だと思います。メインのスピーカーが長岡鉄男氏設計のFE−206スーパー使用のバックロードホーンだから相性が良くて当たり前と言われるかも知れませんが、この頃はまだヤマハのNS−1000Mを使っていました。
尤も、この1000Mは大幅に改造してありましたから、音調は一般的な1000Mとはかなり違っていたかも知れません。  改造の詳細はココ
同じMOS−FETを終段に使用した、AU−X111MOS(サンスイ)と比較すると、AU−X111MOSの方が色気が在ると言うか雰囲気が出ると言うか、音のスピード感は若干遅い感じで、9500Uに対して若干色付けされていた様な印象を受けました。
そうは言っても、X111MOSも超高域の伸びは素晴らしく、この色気の為か、女性ボーカル等は異次元空間に引き込まれる様な、相性の良さを見せてくれました。
さてHMA−9500Uの使いこなしとしては、一番気になるのはオリジナルのゴム脚でこれは非常に貧弱です。
出来れば金属製のしっかりした脚に交換したい感じです。さらにしっかりしたインシュレーターを履かせて鉛のウェイトを載せると押し出しが良くなり、Fレンジ、Dレンジともにかなり改善されます。
私はアルミ削り出しの脚と交換し、ブチルゴムと銅板の自作積層インシュレーターを履かせ、鉛のインゴットを載せています。
まさに長岡式使いこなしの定番と言えると思います。
次に、SPのターミナルが実に使いづらいです。ケーブルを締め付けるナットの部分が外れない為で、私は電気ドリルでナット脱落防止の金属部分を削り落とし、ナットが外れるようにしましたが、これだけで使い勝手は格段に向上します。
ピンと来る方で自力で出来る方は挑戦してみて欲しいと思います。
アンプのスピーカー端子のナットの部分は、一般に外れない形式が多いようですが、これは紛失防止の為でしょうが使いづらい事この上無いです。
仕事場で使っているソニーのTA-F5000も、この部分に手を加え、ナットが外れる様にして使っています。
但し、挑戦する場合は自己責任でお願いします。

また、HMA−9500Uはアイドリング電流の量でキャラクターが変わります。
一番良いのはソースによって調整出来れば楽しいと思いますが、27Kgの鉄の塊をいちいちラックから引っぱり出して、ひっくり返して裏蓋を開けてるのはクレージーでしょう。また、調整用の半固定抵抗はかなり華奢なパーツなので、頻繁にいじるとすぐに壊れてしまいそうです。
参考までに、簡単に私の感じたキャラクターの変化を書きます。
規定値は2.5mvで、これより少なく調整すると音が痩せて来ます。
どんどん少なくすると骨と皮だけの様なぎすぎすごつごつした音に成る様です。
多めに調整すると、ホットで熱気を感じる音に成ります。ラテン系の熱い音ですが、この場合発熱量も増えるので要注意でしょう。
このへんも、自分で考えて自分で責任のとれる人でないと、かなり危険だと思います。
私の場合、メインで聞く音楽がバッハのハープシコード曲(バッハのハープシコード曲だけで外盤中心に700枚くらいのLPレコードが在ります)のため、少な目の方が超高域がシャープに伸びきる感じで私の好みに合うのですが、少な過ぎると返って冷たい感じが出て来るので、規定値より僅かに少ないレベルに調整しています。

このアンプも発売当時は定価が¥270000−で高価な部類に入りましたが、今は50万100万円のアンプが目白押し、¥270000−はセパレートアンプの入門価格帯になってしまいました。
製品としては、オリジナルの、HMA−9500からHMA−9500Uと発展しましたが、これにて打ち止め、後継機種無しで製造中止になってしまいました。
終段に使われているMOS−FET型のトランジスタも、とうの昔に製造中止で、寂しい限りです。