★チェンバロ協奏曲集 ( BWV 1052〜1065) (HOME)
(このページの製作者は 頭蓋調整、その他治療 のプラクティショナーです)
クリスティアーヌ・ジャコテ(第1チェンバロ) (独)FSM 114VXDS (P1979)
チェンバロ協奏曲は、女性チェンバロ奏者のクリスティアーヌ・ジャコテが第1チェンバロを受け持っている演奏が、私の最も好きな演奏です。
このレコードはLP4枚組で、今となっては懐かしい、秋葉原の石丸電気の外盤レコードバーゲンで購入しました。
石丸電気の外盤レコードバーゲン
1980年代のまだアナログレコード全盛の頃、秋葉原の石丸電気本店の特設会場で、外盤レコードバーゲンが定期的に開催されていました。
私の記憶では半年に一度くらいのペースだったと思います。
このバーゲンは、キズものバーゲンと新品バーゲンの2つが別々の部屋に分かれて行われ、長岡鉄男氏の 『 キズと言ってもスリキズ程度の場合が多く、殆どの場合は音には出ないのでお買い得である 』 との評論にもある通り、キズものバーゲンがお買い得でした。
このバーゲンも最初の頃はかなりマイナーな感じで、ゆっくりと買い物が出来たのですが、長岡鉄男氏の紹介もあってか徐々にマニアに知れ渡り、最期の頃は開始前に行列が出来、開始と同時にマニアが売り場に殺到し、殺気だって先を争って奪いあう感じに変貌してしまいました。
そうこうしているうちに時代はLPからCDに移り変わり、バーゲンも幕を閉じたのですが、殺気だったバーゲンは最期の2〜3回だけだった様に記憶しています。
自分としては、マニアのいやらしい側面を見せつけられる感じもあって、終了してほっとした事を憶えています。
クリスティアーヌ・ジャコテのチェンバロ協奏曲
話しを戻して、このジャコテ演奏のチェンバロ協奏曲は、まだそれほど殺気だっていない頃の新品バーゲンで購入しました。
この時も、そこそこの枚数を購入してしまい、4枚組みと言う事もあって、何か気後れする感じがあり、実際に聞いたのは購入してから数ヶ月経っての事でした。
さて、私がバッハの演奏から受け取るインスピレーションですが、バッハを聞き出して初期の頃は同じ演奏を繰り返し聞きながら自分なりのイメージが出来上がって行く感じがあったのですが、色々な曲を色々な演奏家の演奏で聞いて行くうち、徐々に自分なりのバッハに対する統一したイメージが出来上がって来ました。
そうなると、初めて聞く演奏についても、曲の出だしを聞いた瞬間に自分のイメージと合っているか否かが、インスピレーションとしてピンと来る様になって来ました。
このチェンバロ協奏曲集も、1枚目のA面、BWV1052 を聞いた出だしの瞬間、
『 ・・・・、うん、これだな・・・・。 』
とピンと来るものがありました。
この時の印象を簡単に表現すると、明るくて躍動感とキレがあり、同時にアンサンブルの息の合った楽しさがストレートに伝わって来る感じでした。
音質についても、特別に優秀録音盤と言う訳ではありませんが、オーディオマニアの視点から見て、十分に楽しめるレベルでした。
ソロ演奏とアンサンブル
バッハの器楽曲の場合、ソロ演奏とアンサンブルでは、バッハが表そうと意図しているのものが、若干ですが違うような気がします。
まあその様な違いを抜きにしても、一般論として、私はアンサンブルよりソロの演奏が好きです。
その理由は、ソロの演奏からは演奏家の楽曲に対する捉え方や解釈、それに対するアプローチ、等々が感じられ、個人プレーでバッハの本質に孤高に迫る感じが伝わって来る時があるからです。
尤も、例えソロの演奏であっても、この様な感じが伝わって来ない演奏も多いですが・・・・。
それに対してアンサンブルの場合、特に大編成になればなるほど、指揮者や演奏家の曲に対する捉え方や解釈を、いまいち感じ取る事が出来ず、どうもピンと来ません。
『 オーケストラのパートを読む 』 との言葉があるようですが、この言葉を知った時、『 そうか、オーケストラから個々のパートを読み取れる人も居るのか〜、もし自分がパートを読み取る事が出来れば、アンサンブルから演奏者の主張なり解釈を感じる事が出来るかも知れないな〜。 』 と思った事もありました。
それはそれとして、このクリスティアーヌ・ジャコテが第1チェンバロを受け持っている演奏からは、小編成のアンサンブルの息のあった楽しくフレンドリーな感じがストレートに伝わって来ます。
この楽しい感じは、アンサンブルならではのもので、ソロの演奏では表現しようもない世界だと思います。
バッハがこの協奏曲集に託したであろう、アンサンブルとしての楽しさ、生命の輝き、リズミカルな躍動感、これらのものが息の合った演奏により、生き生きと表現されている気がします。
このチェンバロ協奏曲集は、どの曲も同じ様な感じで演奏されているのですが、私が一番素晴らしいと思うのは、比較的小品である第4番(BWV1055)です。
特に第4番の第3楽章の思わず息を飲む様な美しさは、他の演奏家の演奏では感じられないものでした。
また第5番(BWV1056)も素晴らしく美しい演奏だと思います。
当時、クリスティアーヌ・ジャコテのチェンバロ協奏曲と同時代の演奏として、トレバー・ピノックが第1チェンバロを、ケネス・ギルバートが第2チェンバロを受け持っている演奏が色々な評論家から絶賛されていました。
ピノックの演奏は確かにシャープな感じはあるのですが、いまいち潤いに乏しいような、ジャコテの演奏から感じた生き生きとした躍動感、生きる事の喜びのようなものは伝わって来ない感じがしました。
CDはまずまずです
この演奏についてはCDも購入し、最近は殆どCDの方を聞いていますが、ジャケットはあまりパッとしません。
それに対して、LPのジャケットは素晴らしいものがあります。
CDの音質ですが、3枚組みで、何故か1枚目に比べて2枚目の方が少し落ちます。
あくまで想像ですが、1枚目と2枚目でCDを製作する時のケーブル配線の引き回しが変わった様な印象を受けました。
クリスティアーヌ・ジャコテの他のバッハ
クリスティアーヌ・ジャコテの演奏する他のバッハも、幾つか持っています。
その中で素晴らしいのは、ヴァイオリニストのアルテュール・グルミュオとコンビを組んだ、ヴァイオリンとチェンバロのソナタです。
チェンバロ協奏曲と同様に、堅実で確かな演奏の中にも、コンビを組んでいる相手に対する少し控え目でフレンドリーな様子が伝わって来ます、同時に女性らしい優しさ、輝きのようなものも感じられます。
それに対して平均率クラヴィア曲集等のソロ演奏については、ケネスギルバート辺りと比べると、フォルテシモで構成が少し甘くなる感じがあり、力不足を感じてしまいます。
彼女の場合、個人プレーで孤高に本質に迫るとかのスタンスよりも、アンサンブルとしてフレンドリーな感じでバッハを表現する方が似合っているような気がします。
リスト
・トレバー・ピノックとイングリッシュコンサート(P1981)
・グスタフ・レオンハルトとレオンハルトコンサート(P1972)
・クリスティアーヌ・ジャコテとワーテンベルグチェンバロオーケストラ(P1979)
・ユゲット・ドレフェスとアンサンブルバロック(P1979)
・イゴール・キプニスとカールミュンヒンガーシュツッツガルトオーケトラ(P1978)
・ゾルタン・コチシュとリストフランスアカデミー(?)
・スザナ・ルイジチコワとヨセフスークオーケストラ(P1982)
・レイモンド・レパードとイングリッシュチェンバロオーケストラ(P1974)
・カール・リヒターとミュンヘンバッハオーケストラ(P1971)
・ラルフ・カークパトリックとフェスティバルストリングスルサーヌ(P1959)
・タチアナ・ニコラエーワとリタウシェスカンマーオーケストラ(P1975)
・ケネス・ギルバートとイングリッシュチェンバロオーケストラ(P1988)