★6曲のパルティータ ( BWV 825〜830) (HOME)
(このページの製作者は 頭蓋調整、その他治療 のプラクティショナーです)
ケネス・ギルバート演奏 (仏)ハルモニアムンディ HMC1144.46 (P1985)
6曲のパルティータについて
バッハを中心に聴くようになって少しした頃、バッハが自力で出版した最初の器楽曲の楽譜は、6曲のパルティータである事を何かの本で読みました。
バッハ自身、この曲集に対して、何等かの自負のような物があったのでしょう。
それまで6曲のパルティータを聴いた事の無かった私は、これは是非聞いて見たいと思い、当時割とポピュラーだったヘルムート・ワルヒャ演奏のLP(東芝EMI、日本プレス)を買って来て、期待でワクワクしながら聞いてみました。
ところが・・・・・、『 これはなんだろう・・・・。 』 そうです、何か複雑そうに音が次々と出て来るな〜、としか感じられず、よく解らないのです。
今から思うと、最初の頃によく聞いていたイタリア協奏曲等と比べて、曲としての完成度が高く、構造も複雑で、その頃の私ではパルティータを理解できなかった様です。
ケネス・ギルバートとの出会い
ある日、秋葉原の石丸電気の輸入盤フロアで、ケネス・ギルバート演奏の6曲のパルティータ ( 仏ハルモニアムンディ 、3枚組) を買いました。
仏ハルモニアムンディは、音質的に優秀録音盤が多いと長岡鉄男氏が絶賛していたレーベルで、このパルティータも音質への期待が半分くらいありました。
その頃は、購入するレコードは全て輸入盤で、新品の場合は殆ど石丸電気の輸入盤フロアで買っていました。
このため、レコードの買出しは都内まで出掛ける事になり、この時も同時に幾枚か購入したので、買ったすぐ後は1枚目のA面を聞き、期待通りの音質である事を確認し、『 よしよし・・・・。 』 と言う感じでした。
半年くらい経ってでしょうか、改めて全曲を聞きなおしていて、2枚目のB面に進み、4番に針を降ろし、少しして音が出始めたその瞬間、
『 なっ、なんだこれは・・・・・・。 』
今までに聞いたパルティータの4番とは、全く別物の演奏が私の耳に響いて来ました。
ギルバートの演奏するパルティータ4番は、圧倒的な迫力と鋭いキレ、構造的なスケールの大きさが感じられ、初めてパルティータ4番の本当の姿に出会えた気がしました。
『 パルティータ4番は、こう言う曲だったのか・・・・・。 』
何処がどの様に違うのか、言葉で表現する事は難しいのですが、ギルバートの演奏は、曲全体の構成、枠組み、構造的な形をとても大きく捉えてた上で、一つ一つの音をしっかりと表現し、組み立てて行く感じでした。
この全体を構成する枠組みの大きさは、今まで聞いたどの演奏とも違う様に感じられました。
これも彼のキャラクターではあるのでしょう、しかし、私にとっては、けっして誇大的に表現しているのでは無く、曲本来の構造的大きさを正確に捉えている様に感じられました。
色々な演奏家の演奏を聞いていると、フォルテシモで構造の表現が甘くなったり、構造的な崩れを感じる演奏が多いのですが、彼のこの演奏からは、フォルテシモでの甘さや構造の崩れを殆ど感じません。
同じギルバートの演奏でも、インヴェンションとか小プレリュードは、ミクロコスモス的な緻密さが感じられるのですが、パルティータの4番からは彼の男性的な力強さ、構成力の確かさ、キレの鋭さが感じられます。
これが契機となってギルバートに傾倒して行くのですが、一つの転機だったと思います。
録音的にも超ハイファイでした
もう一つ、このLPは音質的にも超ハイファイでした。
特に4番の第4楽章の Sarabande のピアニシモの部分で小鳥のさえずりが聞こえて来ます。
どうやら、偶然に録音されてしまった様です。
長岡鉄男氏がよく書かれていた事の一つに、『 小鳥のさえずりが入っているレコードやCDは、優秀録音盤が多い 』 との説がありますが、このレコードもまさにその通りでした。
このレコードの場合、単なるさえずりが聞こえて来るだけでは無く、小鳥の声を含めて、録音された 『 場 』 そのものがストレートに伝わって来る感じです。
具体的には、この曲が録音されたのはどこか森の中のお城の一室のようで、その部屋には窓があって、そこの先は深い森が広がっており、小鳥がその窓辺に飛んで来てひとしきりさえずり、そしてまた森の中に飛んで行く・・・・、そんな情景がリアルに感じられました。
まさにリスニングルームが異次元空間ワープした感じでした。
CDではいまいち・・・・・
後になって、この演奏を仏プレスのCDでも購入しましたが、残念な事に、何故かこちらの音質はいまいちでした。
もし、ケネスギルバート演奏のパルティータとの初めての出合いがCDであったなら、私の印象もまた違ったものに成っていたと思います。
リスト
・クリスティアーヌ・ジャコテ(P1984)
・グスタフ・レオンハルト(P1970)
・ケネス・ギルバート(P1985)
・ユゲット・ドレフェス(P1983)
・エリザベス・デラポート(P1982)
・タチアナ・ニコラエーワ(P1980)
・ヘルムート・ワルヒャ(?)
・カール・リヒター(P1960)
・グレン・グールド(P1973)
・トレバー・ピノック(P1985)
・ラルフ・カークパトリック(P1958)
・ユウジ・タカハシ(P1977)
・スコット・ロス(P1989)