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プリアンプ
(このページの製作者は 頭蓋調整、その他治療 のプラクティショナーです)
C−280V  (アキュフェーズ)
T、プリアンプ遍歴
アンプはトリオ(現在のケンウッド)のKA−7300Dと言うプリメインアンプからスタートしました。
その頃、各社のカタログを眺めると、ヤマハと言うメーカーは楽器メーカーと言う事も在ってか、一種独特のイメージを持っていました。
初めてヤマハのカタログを見たとき、新製品の 『NEW』 と言う赤い字の見出し付きでプリアンプのC−2aの写真が載っていて、価格も¥170000−、今思えばそれなりですが、貧乏学生だった私には雲の上の製品の様に思えました。
『こんな製品は一体どんな人が買うのだろう・・・・・・』と溜息混じりに思った事を昨日の様に憶えています。車でもカメラでもそうですが、最初に憧れを抱いた製品は、いずれ買ってしまう事があるようです。特に車の場合、昔の憧れの車を経済的に余裕が出来てから中古で手に入れるケースは多いようです。
ところが、私の場合、程なくこのC−2aを購入する事に成ってしまいました。
事の起こりは、ビクターのカートリッジMC−1を聞いてしまった事から始ります。
大学4年の秋頃、学部の大学院の先輩がMC−1を貸してくれました。
早速自宅でMC−1を聞いてみましたが、女性ボーカル等を再生すると、今まで全く聞こえなかった微妙な息づかいまでリアルに再生され、それまで使っていたAT−15Ea(オーディオテクニカ)と比較して、情報量に次元の違いを感じて衝撃を受けました。
しかし定価¥48000−、とても手が出ません。
就職して暫くして、ダイナミックオーディオでMC−1が売価¥32000−で限定5個売りに出た時、思い切って買ってしまいました。
最初はプリメインのMM用のイコライザーで聞いていましたが、これでは再生は出来るがレベルが小さすぎてカセットテープに録音が出来ません。そこで、給料をはたいてC−2aを買ってしまいましたが、これがグレートアップ地獄の始まりでもありました。
C−2aの音ですが、その頃はまだ自分なりの音質評価の基準が出来ていなかったので何とも言えませんが、それなりに素晴らしい音だったと記憶しています。
程なくデンオンからPRA−2000が発売に成り、長岡鉄男氏がリファレンスとして絶賛していましたが、貧乏サラリーマン、とても買い換える事は出来ませんでした。
その頃は、テクニクスのMM型カートリッジ、EPC−100Cも所有していましたが、PRA−2000はMMとMCの切替がフロントパネルのスイッチでは出来ず、リアパネルのピンプラグの差し替え式なのに対してC−2aはフロントで切替が出来ましたので、PRA−2000は使いずらそうで二の足を踏む感じもありました。
そうこうしているうちに約6年が過ぎ、C−2aの高域に少し翳りが出て来ました。
私の記憶では、もともとC−2aの音質はHi−Fi指向でFレンジ広大という訳では無く、少しくすんだ様な音楽性がウリだったと思いますが、更に翳りが出るとやはりバッハのハープシコード曲を聞くには少し苦しくなり、PRA−2000の後継機種であるPRA−2000Zを購入しました。
PRA−2000Zは、さすがに銘機PRA−2000の後継機だけ在って、広大なFレンジで超高域の伸びも素晴らしく、MCカートリッジの実力を十分に引き出してくれました。
このPRA−2000Zは、別名アナログプリと異名をとるだけ在って、フォノイコライザーが充実していて、昇圧トランスによるMCへの対応、ハイゲインイコライザーによるMCへの対応、通常のMM、と3本立てでした。しかし、PRA−2000同様にフロントパネルでのフォノイコライザーの切り替えは出来ず、リアのピンケーブルの差し替え方式で、これはやはり不便でした。
この為、結局MMのEPC−100C(テクニクス)は使わなく成ってしまいました。
MCの昇圧方式で、トランスかハイゲインかと言う選択も、長岡鉄男氏と同じで圧倒的にハイゲインの勝ちでビクターのMC−1、MC−L10、MC−L1000と使い続ける事に成りました。
さて、C−2aですが、一年ほどして、雑誌の売り買い欄で手放しましたが、手放す前に最後に音を出してみると、超高域の翳りが殆ど感じられず、最後のご奉公と言う感じで精一杯頑張って鳴ってくれた様な気がしました。
この様な時は、機器にも感情が在る様な気がしてしまいます。
しかしPRA−2000Zも、約6年の使用で超高域の伸びに翳りが出始め、他の機器もそうですが、一旦音質の劣化を感じ出すと、加速度的に劣化が進むように感られます。
この頃は、PRA−2000Zの後継機種であるPRA−2000ZRも既に製造中止になっていて、と言って約1000枚のアナログディスクを見限る訳にも行かず、結局、当時の長岡鉄男氏のリファレンスだった、アキュフェーズのC−280Vを購入しました。
思えば、始めてヤマハのカタログを見たとき、¥170000−のプリアンプを別世界の様な気持ちで眺めていたのに、ついに¥800000−のプリアンプを買う事に成ってしまった訳です。
さすが高級機 リアパネルも一切手抜き無し
U、PRA−2000Z(デンオン)、C−280V(アキュフェーズ)のキャラクター
最初にお伝えしたい事は、C−280Vを使い始めて10年以上経ちますが、性能的には全く大丈夫で劣化は殆ど無い様に感じられます。私は、単なる気分で買い換えようと言うノリは殆ど無く、今までも性能的な劣化からやむなく交換していますが、C−2a、PRA−2000Zと共に5〜6年で劣化を来たし、特にPRA−2000Zについては性能的には全く気に入っていただけに、とても残念と同時に悲しい思いがしました。
また同クラスのパワーアンプもやはり5〜6年で劣化を来たした感じです。
(今現在なら、オーバーホールに出すと言う選択肢もあるかも知れ無い)
同時に、中級品ならいざ知らず、高級品であるはずのC−2aやPRA−2000Zクラスでもオーディオを続けて行くためには機器を5〜6年で買い換えなければシステムとしての性能が維持出来ないと言うのは悲しい話だと思いました。その意味から言うと、さすがアキュフェーズ、さすがC−280V、これは大丈夫の様です。アキュフェーズもグレード的には幾つかのラインナップがありますが、少なくともこのくらいのクラスで在れば、継年劣化の心配は無さそうに感じます。
また、たとえ劣化しても、メーカーのポリシーからして、オーバーホールが出来るのでは無いかと思います(未確認)。
それで肝心のC−280Vの音ですが、
『 スイッチを入れた瞬間から異次元の素晴らしい音が・・・・・ 』 と書きたい所ですが、最初は全くひどい音で愕然としました。
音が固く、高域(超高域ではありません)の伸びも感じられず、詰まった様な音がして、思わず駄目元でPR−2000Zをオーバーホールに出そうかと思ったくらいでした。
幸いな事に、これを買ったオーディオユニオンの店員の朝倉さんから『三谷さん、このプリは最初は固い音がするかも知れませんよ、店頭品も数カ月して随分音が澄んで来ました。店頭でも解るくらいですから。』とのコメントを貰っていたので、この言葉を支えに(支えと言うのもオーバーですが、¥800000−もする新製品がひどい音では悲しすぎる)使っていると、約半年、3月に購入してそろそろ秋風がたって涼しくなった頃、俄然音が変わって来て、音が澄んで来ると同時に、高域に(超高域ではありません)僅かではありますがキャラクターが乗り、ある種陰影が付いたような、実に華麗でかつ深みのある音が鳴り響きだしました。この時も、 『 これはキャラクターで、いずれこのキャラクターは消えるだろう 』 と言う気がしましたが、やはり数カ月で消えて行き、本当のHiFiに変身して行った感じでした。素晴らしいのは、以後、ずーっと同じ状態を保っている感じがする事です。また、消えてはしまいましたが、あの一時的なキャラクターも捨て難い魅力が在ったと思います。
もう一つ、プリをPRA−2000ZからC−280Vに交換して、ラックの剛性不足が出て来ました。
プリを載せる部分は、24mm厚のラワン合盤ですが、これでは剛性が不足の様で音がフラフラする感じです。
そこでラックの前面の開口部2カ所をアンカーボルトとナットで支えてみると、音のフラ付きは止まりました。
しかし、これではまるでHMA−9500Uがなにか、閉じ込められている様になってしまいました。

また、280Vの脚は、ウッドキャビに一体で木製の出っ張りが固定され、接地面にフェルトが貼られ、脚に成っていますが、これはいまいちの感じです。
そこで、ブチルゴムと銅板の自作積層インシュレーターを8個製作し、これをウッドキャビとラックの間に直接挟んで木製の脚は浮かせています。
この対策で、高域の伸びと繊細感が改善され、微小信号のマスキングが取れ、漂うような雰囲気が出て来ます。
★鉛のウエイトも載せてます★
以下、エージングが終わった状態での、PRA−2000Zとの比較を書いてみます。
280Vの音は一言で言って、ガッチリと腰の据わった重心の低い正攻法の音と言う感じで、システム全体をしっかりコントロールしている感じがします。
恐らく私のシステムの音を決めているのは、280Vだと感じますが、まさに王様の存在感です。
これに比べると2000Zは僅かに腰の弱さが在って、カートリッジの個性に振り回されいる感じがあり、しかし逆に言うとこの僅かな弱さがカートリッジの個性を上手く表現、と言うか拡大して表現する感じがして、これがある種の華やかさにも繋がっていて、良い意味での『楽しめる音』だったと思います。

一度、ウッドキャビから取り出して、自作のインシュレータ−に直接載せてみましたが、これは返って音が痩せてしまい、駄目でした。
また、280VはMMとMCがフロントパネルのスイッチで切替可能でこれも便利ですが、皮肉にもMMは全く使わなくなってしまいました。

長岡鉄男氏の評論を読みますと、アキュフェーズも280Vの後継機種からはフォノイコライザーがオプションのユニット追加式となり、接点の数が増えた為かフォノの鮮度や力強さが低下している様です。
恐らく、280Vが最後の真のアナログディスク対応プリでは無いでしょうか。
自分としては良い買い物をしたと思っています。